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Kindan No Poetry Reading

by Kindan No Tasūketsu

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1.シノザキサトシ 税金対策編 作詩:シノザキサトシ 「さぁ踊ってください!お酒はまだまだたんとありますよ!」 何年も彷徨い歩いた迷宮を、たったいま抜け出したかのような、アッパーな市長は叫んだ。 「1分そのままチェックタイム!心音チェックタイム!」 唄いながら街中の若者が我を忘れてブレイクダンスしている。 私はその光景を楽しみながら、ふと目に止まったレストランに入り、スパイシーサンドとジンジャーエールを注文した。 街の陽気な雰囲気につられて、普段は寡黙な私も 「この街のバケーションは、いまだかつて見たことがない華やかさだ」 と店員に話しかけたほどだ。 私の言葉に店員は相好を崩す。 「今日は5年に一度の税金全部使い切りの日ですからね、みんな色とりどりの唄を乗せていつもより派手にダンスしています」 カウンターに座り、気分よくジンジャーエールの炭酸が浮遊しているのを眺めていると、いつのまにか日が沈んでいた。 店を出ると、街の雰囲気が少し変わっているのに気付いた。 辺りを見渡すと、若者のブレイクダンスはスクワットに替わっていた。今度は若者達は我を忘れてスクワットをしている。 その異様な光景に私は何か危険なものを感じ、どこからかやってきた仮装行列に紛れ込んで身を隠した。 その中にいた気取った出で立ちの男に話しかけた。 「ブレイクダンスがスクワットに替わったのは、何故だ?」 男は答えた 「この葡萄を一緒に召し上がりませんか?」 「葡萄?」 すかさず男の手元を見て私は驚愕した。 男の掌で少女がベースを弾いている 少女が奏でたベースフレーズの魔法で私はト音記号となったのだ。
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2.加奈子 等間隔の穴編 作詩:水連時・J・さひろ 繋いだ手 サイダーでべたべた そう、こういうのがほしかったの 新宿駅に感じる妨害電波でカメラロールしか開けないけどまぁいっかって思えるよね?当事者意識の低さからか落ち着いてるなんて言われるようになっちゃって言い返すのもめんどくさいな わたしはもっと真ん中でぐちゃぐちゃのどろどろになってみたいんだけど 蜂蜜に指突っ込んでみても違うし服を着たままお風呂に入ってみても全然違う 毎日のぐったりしたなにかが足に絡みついてる感じがなくなればいいなって思ったり思わなかったりする 確実なことはひとつもない 流れてるいろんなものに流されてみたくてブックマークつけて眺めてる 七並べが得意って言ったら笑われた 甘い匂いもタータンチェックもふわふわのマフラーもぐずぐずの気分に染めてひとつの大きな穴に埋めちゃいたい わたしもそこに埋まりたい
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3.はましたまさし 効率編 作詩:水連時・J・さひろ ハンドソープの桃の香りとかゴミ収集車のさわやかな音楽にイラつく日曜の朝 一区切りも二区切りもついてるのになにも進まねえほんとにどうなってんだよ 目玉焼きの黄身は真っ先に潰す 踊るプリキュア、床に落ちたりんごのうさぎちゃん、唸る熱いパソコンの前で冷めたホットミルクを飲み干した ものごとの外側と内側をわけて考えるから全てが遅くて時間がかかるのかもしれない この考え自体が無駄な気もしてくる 考える必要のある場面とない場面があってその判断が下手くそ すぐ変換に頼ればいいものを抗うことがかっこいいとでも思ってるんだろうな 辞書を引くことから得られることなんてこの時代そう多くはないはずなのに捨てきれないのはなんでだろう いくらでも楽なんてできるのにいつも二番目にたいへんな道を選ぶ ずるくてたぶん一番楽なやりかた こなしてるって言われてもしかたがない 明日が来る前に今日をしっかりおわらせなくちゃ
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4.水連寺・J・さひろ ジンジャークッキー編 作詩:水連時・J・さひろ 明確になりはじめてる部分を言葉にするのはどうにも怖い 午前4時半のクッキーと散らかった部屋と星野源が歌ってるパソコン 優先順位をつける部分を後回しにするから圧倒的にいろいろなことが下手くそ 現象を特別視しはじめたからわたしももうそろそろ日常的に意味の違うカタカナを使ってしまう大人になる ほどけた靴ひもも引きずったマフラーも気にしないで走れることがあるんだ 遠いところに見えるけど本当はすぐ隣にいたりする 距離感がわからなくて伝わらなかったり踏み込み過ぎてしまったり後悔することも数え切れないし長い瞬きに不安になることもあるけどお皿に残したピザの耳をちゃんと残さず食べてくれてるの知ってるよ 気持ちがぐずついても鼻先についた生クリームで笑わせて 低い気圧もなかったことにして 無理について来なくていいし引き止めないでいいけど手だけは離さないで わがまま全部 まだ夜だから許してね
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5.上野勇介 出発編 作詩:水連時・J・さひろ 高速道路の下、人の気配が消えた夜の白い煙とリュックの重み おとといの晩御飯のことを考える あの人の残したピザの耳をビールで流し込んだ 赤い玉ねぎのために午前3時のコンビニを回る 大きすぎる火で笑ってほしかっただけなのに 左手に増えていく時計の時間はまちまちだけど本物がわかっちゃうから君はまだまだだね 1日のスピードが速かったり遅かったりするけど相対性だけで生きてられるのが楽だから 見て見ぬふりしてきたものたちが先で笑ってても興味を持っちゃだめだよ 電車から眺める足元と空の時差に違和感を覚えないで 暗いところでなら気づかなかったことは全部無視して 勝てなくても怒らないから負けないで 続くコンクリートの屋根の音に耳を澄まして煙草のジェンガに火を放つ 濡れたアスファルトに寝転んで見えない星を数えながら目を閉じる 明るくなったら歩き出そう しばらくこのままで めちゃくちゃにわがままなあの人の言葉を思い出して口元が緩んだ
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6.ほうのきかずなり クリスマス編 作詩:ほうのきかずなり クリスマスがやってくる 街はもみの木でいっぱいだ 聴いたことのないクリスマスソングが流れてる 彼女の声はすでに私のもの 私の為にアンダーグラウンドに触れてくれた イブを待って、きっと音が立ち上がる 立ち上がるとき、手で伝えてほしい アメリカンを起こせ! 今宵の雪は素敵に壊れる 彼女は刹那に身をよせる でも、ふしだらに罪はない 牧師が言った、 「真実でありなさい!」 私は砂場で円を描く 注意深く円を描く さて、何をして遊ぼう step by step ooh baby gonna get to you girl step by step ooh aah 寂しいはずだよそれは最初からわかっていたこと あいまいな夜 実存主義者たちはかぐわしい花園へと消えていった 喉がからからと乾いていたので 子供用のシャンペン そう、シャンメリーを飲んだ 宝石をちりばめた炭酸が体内ではにかんだ 心乱されてる場合じゃない 私は、サンタを探しに森へ行くんだ 小道にさしかかり木陰でひと休み ニシンを食べてるおじさんがぼやけた目をしてこう言った 「街が賑わしいが、今日はなんの日だ?」 カラーン、カラーン 鐘の音が聞こえた 新しい世界の始まりに飲みかけのシャンメリーをおじさんにあげた 夜の鐘は鳴り止まない 自分の示すべき愛を 沢山の奇蹟を起こしてくれる

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released December 11, 2014

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